岡谷鋼機株式会社の岡谷篤一氏と弊社代表の渡邉が対談しました

名古屋の優良企業に聞く“企業理念”について

名古屋の代表たる企業や名士の方のお話をうかがい、若手の経営者にエールを送るタスクールの企画。

元参議院議員株式会社タスクールPlus顧問木俣佳丈氏に司会をお願いして、名古屋の優良企業の経営に対する姿勢をお聞きしていきます。

今回は、名古屋市中区にある日本を代表する老舗企業である、岡谷鋼機株式会社の岡谷取締役社長です。

岡谷鋼機株式会社は、創立1669年。創業から350年の歴史を持つ企業です。名古屋に本社を置き、名古屋証券取引所 市場第1部にのみ上場するなど、名古屋に根ざした堅実な経営を続けています。その一方で、1950年代から海外拠点づくりと国内の販売網整備を推進。時勢を見据えつつ事業の多角化も推進する企業です。伝統がありながらも、世界の変化の中で進化し変革を続ける企業といえます。


岡谷鋼機株式会社 岡谷 篤一(おかや とくいち)
日本の実業家であり、岡谷鋼機創業家出身。名古屋を代表する名士であり、1990年から30年に渡り代表取締役社長を務める。
名古屋商工会議所会頭、名古屋中小企業投資育成社長、中部経済同友会代表幹事等を歴任。
愛知県名古屋市瑞穂区出身。
1967年慶応義塾大学経済学部を卒業し、新日本製鐵入社(現 日本製鉄)。
1975年岡谷鋼機に入社。
1982年取締役に就任。
1990年に代表取締役社長に就任。
このほかにも在名古屋オランダ王国名誉領事、名古屋中小企業投資育成取締役社長を歴任している。


【利益よりも社会に貢献する意識を持つことで、会社は発展する】

木俣:名古屋の優良企業の経営者にお話をお聞きして、若手の経営者にエールを送りたいと思っています。岡谷鋼機株式会社は1669年創業で350年の歴史を持つ名古屋を代表する企業です。そして、岡谷社長は既に30年近くも社長として采配を振るい、伝統を守りながらも時代に合わせた経営をしています。その秘訣などについてお話をうかがいたいと思います。最初に、岡谷鋼機の特色と歴史、今後の戦略をお聞かせ願えますか?

岡谷 篤一氏 (以下、岡谷):350年続けられたのは名古屋という地域に支えられたところはある。城下町の名古屋では、物資で不自由することはなかった。例えば食料にしても、木材の木曽の檜にしても、割と恵まれた環境だったし、人もそうだが、地域的に堅実なところがあったのも大きいと思う。それもあり、気がついたら350年の時間が経っていた。長い歴史の中では、わたしは13番目のリレーの走者だったのかと思うこともある。つまり、いままで続いた岡谷鋼機という歴史を途切れさせないように、次の代につなぐことがわたしの役割だと。

確かに会社の歴史は長くなった。そのなかで振り返ると、基本的に岡谷鋼機の名前に沿った商売を続けている。最初の頃は鍛冶屋さんから農耕具、農機具を譲り受け、名古屋や北陸へと売っていた。戦中に「商店」から「鋼機」という名前になり佐渡の銀山に鉱山の機械を納めたこともある。いまでは、時代の流れに合わせてITやAI関連にも携わっているが、ずっと従来商品からの流れを守っており、基本的にはぶれていない。

渡邉:長い歴史の中でもぶれない経営には感銘を受けます。私もタスクールという会社を7年間経営してきました。私の父も名古屋の出身です。父を見ていると確かに、堅実だと思います。名古屋の地方銀行に勤めていたということもあったかもしれません。
また、私が起業する際にも、初めは副業として事業を軌道に乗せてから、その後起業したと言う経緯があります。地域性は大きいのかもしれません。考え方の基礎になっていますから。それに、無理にリスクをとって経営をしようと考えたこともありません。どちらかというと、準備をしっかりして、手応えがあったことを深く進めています。

しかし、堅実といっても13代目というのは想像できない世界です。リレーとおっしゃいましたが、気をつけていること、続け方、この先の展望を教えて頂けますか?

岡谷:次の走者は今のところ誰かわからないけれど、大事につないでいくことが大切だと思う。自分は社長になって30年。とにかく、会社を成長させたくて努力してきた。350年で13人というのは少ないと思われるかもしれない。計算すると、ひとり20年から30年つづくわけだから。ただ、歴史のある企業は同じような感じだろう。独特の時間の流れがあるとは思う。

その中で、30年続く秘訣といえば、毎日一生懸命やってきたことかな。とても最初から30年やろうとは思わないでしょう。

それに、就任当初は会社が難しい状態にあると思っていた。わたしには危機感もあった。当時のままの経営では、20年後、30年後が危ういと。なぜなら、世の中では商社不要論もあったし、古い会社だから社内に危機感を感じさせるのが難しかった。毎年毎年必死だった。

そこで、社長になって5年後の1995年に上場をすることにした。危機にある中で、上場するためにも社員のみんなに随分とどうしたらいいのかを考えてもらった。そのような経験を通じて、利益よりも世の中のお役に立てることをすれば、その対価として利益がついてくるようになるとわたしは最近になって思うようになった。そしてある程度結果がでてきていると思う。少し言い過ぎかもしれないが。

渡邉:第1回目にお話をうかがった名港海運株式会社の髙橋会長も同じことを言っていました。やはり、続く秘訣は利益よりも、世の中に貢献していくことですね。

ところで、岡谷鋼機というと海外というイメージがあります。国内の市場が縮小に向かう中で、今後の海外も含めて、戦略のポイントはどのようなところにあるのでしょうか?

岡谷:以前は、海外の取引比率は10%もなかった。今のところ国内は縮小とまでは行っていないが、拡大のペースは鈍っている。それとともに、仕事を変えてきたのは間違いではない。もし国内市場が縮小するのであれば、海外でも商売するしかないでしょう。その時も、岡谷鋼機の発展が世界の発展につながることを考えてきた。

その結果、今では30%の比率にまでなってきている。それに、海外で取引するものと国内のものとは随分と変化してきているね。多分、国内は、省力化、IT、AI、IoTを活用したものがマーケットになる。一方で海外は、生活そのものが大変な国が多いから、そんな高級な物はいらない。それよりも、どのように雇用を生むかの方が問題だろう。そういう意味で、国内と、海外マーケットは棲み分けしておく必要がある。

渡邉:そこは意識していませんでした。どちらかというと、高度なもののほうが海外で必要だと考えていました。確かに富める国は多くありません。見るべき市場をどう選ぶかで、何が必要になるのかも変わるということですね。

【社風は社員とのコミュニケーションにより醸成される】

木俣:利益よりも世界に貢献できることを考える姿勢は大切だと思いました。どうしても売上や利益を気にしてしまいます。本当に社会に必要とされる会社となり、生き残るには世界に貢献することが大切だとわかりました。そんな素晴らしい岡谷社長に、経営者として大切にしていることお聞きしたいとおもいます。 座右の銘があれば是非ご指南くださいませ。

岡谷:あまりこだわってはいないけれど、仕事を断らずに受けようと考えたときもあった。断らないことはよかったと思う。とにかく自分の経験にもなるし、違う世界を見ることもできる。それにより、仕事をする上でも、人間としても勉強になる。それもあって、今までボーイスカウトも、共同募金もいろいろ引き受けてきた。経験が少ない間は、なんでもまず仕事を受けてチャレンジしてみることだね。

座右の銘というほどではないが、会社としては、1836年ごろの7代目の時に作られた、岡谷鋼機の日誦五則というのがある。

(1)外を飾らず心を磨くべし。
(2)分限を知り贅を慎むべし。
(3)虚を憎み誠を重んずべし。
(4)働くを楽しみ懶を羞とすべし。
(5)責任を知り力を協すべし。

最初の1~3は道徳的な側面があり、仕事をする上での信用につながると思う。4~5は、楽しんで働く気持ちの大切さや、一致団結して働く大切さを示している。
恥じないような仕事をしていきなさいという教えもあれば、一生懸命働いてもうまくいかないこともあるが、それで投げやりになってはいけない。それに楽しんで働きなさいともいっている。それであれば、若い人も辞めない。そんな環境作りが大切だと思う。最後の5では、一致団結することが大切だといっている。For The Team。ラグビーの言葉にあるように。

最近になって、うまくまとまっているなと思うようになってきた。最初はわからなくても、徐々にわかってくるものだと思う。

渡邉:私の会社でも社員数が30人になってくると、人によって個人差が出てきます。会社に貢献できていると思う人と、そうではない人です。貢献出来ていないと思う人は退職してしまったりします。そこで、クレドを作りました。難しいのは、そのクレドの本質、想いがなかなか伝わらないところです。こういった想いはどうしたら伝わるのでしょうか?

岡谷:なかなか難しいね。急に伝えようとしても伝わらないね。当社も、先ほどの日誦五則を特別にみんなで詠み上げたりはしていない。それよりも、会社の行事の中でだんだん伝わっていくものかと思っている。その中で、社風に合わず辞めていく人も居るでしょう。経営者としてはつらいところだね。

そのため、費用はかかるが社員が積極的にコミュニケーションを取ることで会社を好きになってくれるように様々な事をしている。比較的簡単なことでいえば社員向けには野球大会やソフトボール大会など。会社組織としては、毎年各地をまわって海外子会社の社長会や、国内子会社の社長会を開催している。

あとは、OB会。50回忌まで法要で戒名を読み上げることもしている。そんなことをし続けているうちに、だんだん会社の社風がでてくるのかと思う。不思議なもので、社風のベースには日誦五則があるように感じてきている。

わたしは、例えば5年に一回派手に海外に社員旅行をするよりも、毎年続けることが非常に大切だと思っている。なぜなら、5年も経つと人が入れ替わるからね。そして、仕事以外でもね、コミュニケーションをとるのは大切なことだと思う。会社を続ける、社風を作る上でも。社員もみんな家族のようなもの。

渡邉:タスクールでも内閣府を始め官公庁の働き方改革推進事業を実施しています。先日は勤務日にホームカミングデーと称して行いました。東京、岐阜など、名古屋とは違う営業所の社員家族にも集まってもらいました。確かに、交通費もかかりますし、なにより勤務日に開催すると言う時間が気になってしまいます。大きな機会損失につながってしまうこともあると思います。しかし、それ以上にコミュニケーションが必要だと思っています。
それに法要の話しには感銘を受けました。起業してから7年ですが、起業当時からいる社員はほとんどいません。社歴の短い会社なので、定年退職はいませんが、起業や転職で離れた人もいます。そういったOBの人にも声をかけて一緒に何かしたいと思いました。今年から、そして毎年できることをしていきたいと思います。

【自信を持って世界のリーダーを目指して欲しい】

木俣:渡邉さんの会社でもすぐにできる事をご指南いただけましたね。では、最後になりますが、若い経営者に期待することをお聞かせ願えますか?

岡谷:そうだね。期待することは沢山あるけど、一番伝えたいのは「なんでもやってみる」ということかな。わたしの経験からも言えることだが、本当に成長できる。若い人は一生懸命だから。そして、自分で知識と知恵を使って仕事を作っていくことだと思う。可能性は沢山ある。それを活かすように地味に努力することが必要だろうね。ただ、人に迷惑を掛けるようなことはしていけない。それだけは注意して欲しい。

渡邉:ありがたいお言葉です。タスクールも7年経営してきましたが、まだまだいろいろなことにチャレンジしようと思いました。その中でも、結果が出ないといって、楽な方に進んでしまうようなことはないようにしたいと思います。どうしても結果に流されて、いつの間にか特定の分野に特化してしまいます。色々とチャレンジしているつもりが、同じ分野でやっている気になるだけになってしまう。今後は、もっと意識的に仕事の幅を広げるように考えを改めたいと思いました。

岡谷:そうだね。ただ、自分で一生懸命考えて、これだと思ったらしつこくやっていくことも大切だから。しっかり「なぜだろう」と考える事が大切。PDCAというのかな。「なぜ」と「なぜなら」をいつも考えながらやっていくと、変わると思うし、人間として成長すると思う。

それと、朝令暮改をしてもいいと思う。こんな時代だから必死に10年石にかじりついてもというのではいけない。もし間違っていたと思ったら、朝令暮改して、反省して調整しながら次のステップにうつってもいいと思う。

最後だけど、やはり日本の若手には世界のリーダーをとれるような気合いを持って欲しい。日本の和の精神は海外から非常に高く評価されている。誠実だし自信を持って次の世界のリーダーになるように頑張って欲しい。

渡邉:歴史を持つ企業で30年もの間社長をしてきた重みを言葉の端々に感じました。13代目の走者として次につなげる役割をこなしながらも、時代に合わせて変革を厭わない姿勢。企業が生き残るために大切なことは、時代の変化に対応することとも言われています。想像すると大変な重責と思いますが、岡谷社長の笑顔、やさしさにあふれる物言い、立ち振る舞いから、重責よりも楽しく仕事をされているように感じました。ありがとうございました。「なぜ」と「なぜなら」を考えながら、とにかく幅広くチャレンジするという姿勢は、若手経営者に大きな刺激を与えるものとなるでしょう。

タスクールも、今日お聞きした、チャレンジ精神の大切さを忘れず、地元企業の発展に貢献しながら、歴史を作っていくことを堅く決意いたしました。ありがとうございました。